2026.05.17

心をととのえる「糸掛け曼荼羅」。無言のワークショップに隠されたセラピー効果

糸掛け曼荼羅の制作について話すワークショップ講師の平尾須美子さん

日本糸掛曼荼羅認定講師として、地元・静岡県を中心に活動する平尾須美子さん。

前編では、幼少期のものづくりへの思いや、糸掛け曼荼羅との運命的な出会い、そして「飽き性」だった彼女が講師として教える立場になるまでの道のりを伺いました。

続く中編では、糸掛け曼荼羅が持つもう一つの大きな魅力である「セラピー効果」について深く掘り下げていきます。

ただ美しい幾何学模様を作り上げるだけでなく、黙々と糸を掛ける時間がもたらす心の浄化作用や、ワークショップという場で生まれる温かいコミュニケーションなど、単なるアートにとどまらない糸掛け曼荼羅の奥深い世界。

日々の生活にストレスを感じている方や、自分のための時間が作れていない方にこそ知ってほしい、糸掛け曼荼羅の癒やしの力に迫ります。

第1回:「作ってよかった!」その言葉が原動力に。糸掛け曼荼羅との運命の出会い

目次

無言で没頭する時間がもたらす「心の浄化」

木製ボードに糸を張りながら糸掛け曼荼羅を制作する様子

糸掛け曼荼羅は、ただ美しい作品を作るだけのアートではありません。

平尾さんは、その制作過程にこそ大きな意味があると感じています。

「作っている途中って結構集中して作ったり、本当に一人で黙々と作るので、集中力がアップしたりとか。

あとは出来上がってからの達成感ももちろんあるんですけど、このもの自体に浄化作用があったりとかっていう風に言われてたりするんです」と、その効果を説明してくれました。

日々の生活の中で、私たちは様々なストレスやモヤモヤを抱えがちです。

そんな時、規則正しく釘に糸を掛けていくという単純かつ繊細な作業に没頭することで、余計な思考が削ぎ落とされ、心がすっきりと整理されていくのだといいます。

平尾さん自身も、「他のことは何も考えなくて作れるので、それで本当にすっきりする。ストレス解消ではないけど、そういう感じの効果はあるのかなって自分では思ってます」と、日常的に糸掛け曼荼羅に助けられていることを明かしてくれました。

ワークショップは「自分のための時間」を作る場所

笑顔で糸掛け曼荼羅について語る女性講師平尾さんの横顔

平尾さんが開催するワークショップには、様々な方が参加されます。

中には、私生活で何かモヤモヤしたものを抱えたまま訪れる方もいるそうです。

「作って出来上がってみんなに感想をもらうときに、『作ってよかった』とか『すごくすっきりした』とか、『モヤモヤしてたけど今日はよかったよ』とかっていうのを言ってもらえるんです」と、平尾さんは嬉しそうに語ります。

現代人は忙しく、なかなか自分自身と向き合う時間を作ることができません。

平尾さんのワークショップは、単に技術を教える場ではなく、参加者が日常から離れ、純粋に「自分のための時間」を持てる貴重な空間となっているのです。

黙々と作業に没頭し、完成した作品を前にした時の晴れやかな笑顔。それは、糸掛け曼荼羅が持つ確かなセラピー効果を証明しています。

「無言の空間」から生まれる、温かいコミュニケーション

繊細な糸を張り重ねて曼荼羅模様を作る手元のアップ

ワークショップの様子を伺うと、少し意外な答えが返ってきました。

「お話ししながらできる作品とできない作品があるので、本当にすごい大勢集まったワークショップでも無言でやることが結構あったりとかして」と平尾さん。

数を数えながら規則正しく糸を掛けていく作品では、少しでも気を抜くと間違えてしまうため、参加者全員が言葉を発することなく、極度の集中状態で作業を進めるのだそうです。

「私が話しかけて数がわからなくなると困っちゃうんですよね、だから、結構静かに見守ってるっていう感じですかね」と笑います。

しかし、その静寂は決して冷たいものではありません。

全員が同じ空間で一つのことに集中しているという一体感がそこにはあります。

そして、作品が完成した瞬間、その無言の空間は一転して賑やかなおしゃべりの場へと変わるのです。

個性が光る作品たち。違いを認め合う喜び

糸掛け曼荼羅の魅力について説明するワークショップ講師の女性

完成後の時間は、参加者同士のコミュニケーションが最も弾む瞬間です。

「自分が作った作品と他の方が作った作品を(見比べると)、色が全然違うんで。

同じ形を作っても色が全然違ったりすると、作品自体が違うように見えたりするんです」と平尾さんは語ります。用意された同じデザイン、同じ手順で作ったはずなのに、選ぶ糸の色や組み合わせによって、出来上がる作品は全く異なる表情を見せます。

「それをみんなで『あ、その色良かったね』とか『今度はこの色にしてみようかな』みたいな感じで、その後はもうおしゃべりが止まらない感じですね」と、ワークショップ後の楽しげな様子を教えてくれました。

それぞれの個性が反映された作品を見せ合い、互いの違いを認め、褒め合う。

この温かい交流もまた、糸掛け曼荼羅のワークショップが持つ大きな魅力の一つなのです。

次回予告

糸掛け曼荼羅を通じて、多くの人に「自分のための時間」と「心の癒やし」を提供している平尾さん。

後編では、彼女がこれから挑戦したいと考えている新たな夢や、未来への展望について伺います。

ミニ畳を使った和の空間とのコラボレーションや、これまでにない大型作品への意欲など、糸掛け曼荼羅のさらなる可能性を探ります。

さらに、これから何か新しいことを始めたいと考えている方への力強いメッセージもお届けします。

どうぞお楽しみに!

この記事を書いた人

岡﨑渉のアバター
フリーライター
これまでBtoCの営業やWebマーケティング、キャリアコンサルタントなど幅広い仕事を経験。700人以上のキャリア・人生の転機に携わってきた経験から、お仕事図鑑では、働く人のリアルを丁寧に届け、次の一歩のヒントになる編集を心がけています。
【資格】キャリアコンサルタント・宅地建物取引士・FP2級

他のインタビュー記事

特集記事

目次