| マイクロブタふれあい&ペットショップ「スイーティーピッグス」オーナー / ブリーダー 幼少期から数え切れないほどの動物に囲まれて育ち、小学生で「犬の病気図鑑」を愛読するほど動物の命への探求心が強かった。 一度は動物業界への道を断念し、貿易事務という異業種を経験するも、動物への情熱を捨てきれず24歳で復帰。 トリマーや動物病院での勤務を経て、既存のペットショップのあり方に疑問を抱き、2019年に「命を無駄にしない」仲介型の未来型ペットショップを千葉県船橋市にオープン。 起業4年目には、すべてを一人で背負い込み心身の限界(暗黒期)を経験するが、家族や仲間の支えで復活。現在はマイクロブタのブリーダーとしても活動し、新しい命の誕生と成長を見守り続けている。 「おばあちゃんになってもお店に立ち続けたい」という夢を抱き、動物関連事業での海外展開も見据えながら、年齢に関係なく挑戦を続ける生涯現役のブリーダー。 |
「本当に好きなことを仕事にするには、どうすればいいのだろうか」
キャリアの岐路に立つとき、誰もが一度は思い悩むテーマかもしれません。
千葉県船橋市でマイクロブタふれあいとペットショップ「スイーティーピッグス」のオーナーを務め、自身もブリーダーとして活動するジャラー恵子さんも、その一人でした。
幼い頃から動物に囲まれて育ちながらも、一度は別の道を歩み、再び動物の世界へと戻ってきた彼女。
その軌跡には、理想と現実の間で揺れ動く葛藤と、命と向き合う強い覚悟がありました。
今回は全3回にわたり、ジャラーさんが独自のペットショップを立ち上げるまでの物語と、経営者としての哲学に迫ります。
動物に囲まれた幼少期と獣医への憧れ

ジャラーさんの原点は、物心ついた頃から身近にあった「命」との触れ合いにあります。
動物好きの祖母の影響で、実家では犬や猫はもちろん、魚、昆虫、両生類、さらにはニワトリまで、数え切れないほどの生き物たちと暮らしてきました。
特に印象深かったのは、当時珍しかった白いチャウチャウ犬との日々。
シェットランドシープドッグと白いチャウチャウを連れた祖母は、近所でもすっかり有名な存在だったと言います。
小学生の頃には分厚い「犬の病気図鑑」を愛読し、「どうしてこの病気になってしまうのか」「次は病気にさせないよう、もっと愛情を込めて育てよう」と、命を守るための知識を自ら学んでいたと言います。
飼っていた動物が亡くなるたびに深く悲しみながらも、その経験を糧に健康管理への意識を高めていった彼女にとって、将来の夢が「獣医」になることは、ごく自然な流れでした。
学校でも生き物係を率先して担い、インターネットのない時代に図鑑を読み込んで動物の知識を蓄えていた少女の姿が目に浮かびます。
現実との直面と、海外・異業種への挑戦

しかし、高校2年生で進路を決める際、ジャラーさんは大きな壁に直面します。
獣医になるためには6年間の大学生活が必要なこと、そして何より、手術や解剖、血を見るといった「命の厳しい現実」と向き合わなければならないことに気づいたのです。
「本当に自分が目指すべきものなのだろうか」。
そう思い悩んだ彼女は、もう一つの興味であった「海外」へと目を向けます。
ちょうどその頃にアメリカへ渡航する機会があり、海外の文化や生活に強く惹かれたことが決定打となりました。
動物の道ではなく、外国語の専門学校へ進学するという、まったく異なるルートを選んだのです。
卒業後は貿易関係の会社に就職し、月曜日から金曜日の土日休みという安定した会社員生活をスタートさせました。
時短勤務制度を活用しながら子育てとの両立も図れる環境は、結婚・出産後の生活設計という現実的な面でも合理的な選択でした。
しかし、どれだけ安定した生活を送っていても、心の奥底にある「動物が好き」という思いが消えることはありませんでした。
ペット業界への復帰と、販売の現場での葛藤

動物への情熱が再燃したジャラーさんは、自費でトリマーの資格を取得し、ペットショップや動物病院で働き始めます。
動物病院では看護師としての立ち会い業務とトリマー業務を掛け持ちし、年末年始は朝から晩までトリミングに追われるほどの多忙な日々を送りました。
責任感の強い彼女は、動物の命を預かる現場での緊張感を全身で受け止めながら、着実にスキルと経験を積み重ねていきます。
しかし、そこで待っていたのは、再びの葛藤でした。
20代で経験したペットショップでの販売業務では、「命を売らなければならない」というノルマや業界の構造に直面。
たとえばハムスターは生後1ヶ月ほどしか「売れる時期」がなく、その期間を過ぎてしまった子たちはどうなるのか。
そうした業界の現実に心を痛め、「自分の思いとは違う」という矛盾が積み重なっていきました。
動物が好きだからこそ、その命が消費されるような状況に耐えられなかったのです。
「未来型のペットショップ」という新たな挑戦

コロナ禍を経て専業主婦として過ごしていた時期、3人目の子供が生まれた後に「もう一度、外に出て何かやりたい」と決意したジャラーさんは、近所のホームセンター内のペットショップで週2回・4時間のパート勤務を始めます。
「やっぱり動物の仕事は楽しい」と再認識した彼女は、同時に以前と変わらない業界の現実にも直面します。
そこで彼女が出した答えは、「既存のペットショップのあり方に葛藤があるなら、自分の思い通りに『未来型のペットショップ』を作ればいい」というものでした。
動物を大量に陳列して販売するのではなく、お客様の要望を聞き、信頼できるブリーダーとマッチングさせる「仲介型」のスタイル。
世界的にペットショップが禁止されている国もある中で、命を無駄にしない新しいペットショップの形を自らの手で切り拓いたのです。
旦那さんに内緒でパートに応募し、採用通知を受け取ったときの喜びが、今の「スイーティーピッグス」へと続く第一歩でした。
こうして誕生した店舗は、今年で5年目を迎えています。
次回予告
自身の理想を形にし、独自のスタイルでペットショップを軌道に乗せ始めたジャラーさん。しかし、経営者としてすべてを一人で背負う中で、やがて心身ともに限界を迎える「暗黒期」が訪れます。次回は、起業4年目に直面した最大の壁と、そこから彼女を救い出した「仲間の存在」、そして経営者としての大きな意識の変化に迫ります。









