2026.04.05

「作ってよかった!」その言葉が原動力に。糸掛け曼荼羅との運命の出会い

日本糸掛曼荼羅認定講師

静岡県を拠点に、規則正しく交差する糸が織りなす神秘的なアート「糸掛け曼荼羅(いとかけまんだら)」の魅力を伝える認定講師。

幼少期から双子の姉妹とともにハンドメイドに親しむ。社会人になってからも様々なものづくりに挑戦するが、「飽き性」でなかなか長続きしない日々を送っていた。しかし、SNSで偶然目にした糸掛け曼荼羅に一目惚れ。数学的な思考で緻密に糸を掛けていく作業と、完成時の圧倒的な達成感にすっかり魅了され、自ら教える立場へと転身を果たす。

現在は、月に1回の定期ワークショップや出張体験会などを精力的に開催。無言で作業に没頭する時間がもたらす「マインドフルネス効果」と、完成後にお互いの個性を褒め合う温かいコミュニケーションが、多くの参加者に癒やしと笑顔を届けている。

地元の畳店とコラボレーションした「ミニ畳の糸掛け曼荼羅」など、和の心を取り入れたオリジナル作品も手がけ、国立新美術館への出展も達成。今後は「一畳サイズの大型作品の制作」や「個展の開催」を目標に掲げ、枠にとらわれない独自の芸術世界を探求し続けている。

規則正しく交差する糸が織りなす、美しくも神秘的な幾何学模様。それが「糸掛け曼荼羅(いとかけまんだら)」です。

見る人の心を惹きつけ、空間を華やかに彩るこのアートは、近年インテリアやプレゼントとしても人気を集めています。

今回お話を伺ったのは、日本糸掛曼荼羅認定講師として活動する平尾須美子さん。

地元・静岡県を拠点に、ワークショップの開催やイベントへの出店、さらにはミニ畳を使ったオリジナルの糸掛け曼荼羅の制作・販売など、精力的に活動されています。

国立新美術館への出展も果たすなど、着実にステップアップを続ける平尾さんですが、実は糸掛け曼荼羅に出会うまでは、様々なものづくりに挑戦しては長続きしない日々を送っていたそうです。

そんな彼女が、なぜ糸掛け曼荼羅に深く魅了され、講師として教える立場にまでなったのか。

前編では、幼少期のものづくりへの思いから、糸掛け曼荼羅との運命的な出会い、そして現在の活動に至るまでの道のりを紐解いていきます。

目次

双子の姉妹と夢中になった、ものづくりの原点

平尾さんのものづくりのルーツは、自然豊かな静岡県で過ごした幼少期にまで遡ります。

双子の姉妹として生まれた彼女は、幼い頃から姉妹で一緒に遊ぶことが多く、その遊びの中心には常に「ものづくり」があったといいます。

「昔よくビーズで何かを作るのが流行ったりとかしてたんですけど、そういうのを作ってみたりとか、あとは折り紙をやったりとか。そういう感じで、もう本当に二人でずっとやってた記憶がありますね」と、平尾さんは当時を懐かしむように語ってくれました。

学校の宿題やコンクールで特別な賞を取るようなことはなかったものの、二人で黙々と手先を動かし、形あるものを作り上げていく時間は、彼女にとってかけがえのない喜びだったようです。

この幼少期の経験が、手仕事への親しみと、集中して作業に取り組む姿勢の土台となり、後の糸掛け曼荼羅という緻密なアートへと繋がる伏線になっていたのかもしれません。

Facebookでの偶然の発見が人生を変えた

学校を卒業後、ものづくりとは全く無縁の会社員として働き始めた平尾さん。

しかし、心のどこかで創作への意欲は持ち続けていました。

「もともとその前から、曼荼羅模様っていうのは好きで、デザインとかが好きだったんです。

糸掛け曼荼羅を始める前には、ボールペンで点々と描く点描曼荼羅っていうのも習っていました」と語るように、幾何学的な模様への興味は常にあったそうです。

そんな彼女の人生を大きく変えたのが、約6年前のFacebookでの偶然の出会いでした。

投稿に流れてきた糸掛け曼荼羅の画像を見た瞬間、「これは何だろう!」と強い衝撃を受けたといいます。

すぐに調べてみると、偶然にも近くでワークショップが開催されていることを知り、迷わず体験へ。「そこからスタートしました」と振り返る平尾さん。

その一歩が、彼女を深く美しい糸掛け曼荼羅の世界へと導いていくことになります。

「飽き性」を克服させた、糸掛け曼荼羅の魅力

これまでも様々なものづくりに挑戦してきた平尾さんですが、実は長続きしないことが悩みだったそうです。

「今までいろんなものづくりって、ちょっとやって飽きて、またちょっと別のことやって飽きて、っていうのの繰り返しだったんです。

でも今回、本当に糸掛け曼荼羅に出会って、それはいまだに飽きずにずっとできていることなので」と、ご自身でも驚いている様子。

その違いはどこにあるのでしょうか。平尾さんは「達成感が違う」と語ります。

最初は小さな作品から始まり、徐々に大きな作品へと挑戦していく過程で、完成したときの喜びが何倍にも膨れ上がっていったのです。

さらに、「みんなに見てもらいたいっていう風に変わっていった」という心境の変化も大きかったといいます。

規則正しく釘を打ち、数学的な思考で糸を掛けていく緻密な作業。

その果てに現れる美しい模様は、彼女の「飽き性」を完全に克服させるほどの強い引力を持っていました。

楽しさを伝えたい。体験者から「教える」立場へ

糸掛け曼荼羅の魅力にすっかり取り憑かれた平尾さんは、やがて「自分で作る」ことから「人に教える」ことへと意識を向けていきます。

「一番最初に自分で体験してみて楽しくて、その後いろいろ楽しかったので、教えたいってその時にすぐに思ったんですよ」と、その衝動は非常に純粋で力強いものでした。

そこから彼女の行動力は加速します。教えるための資格がないか調べ、インターネットで教材を購入。

自宅で熱心に勉強を重ね、見事に日本糸掛曼荼羅認定講師の資格を取得しました。

現在では、月に1回の定期的なワークショップをはじめ、出張ワークショップ、SBS学園での講師、さらには車屋さんのイベントでの体験会など、静岡県内を駆け回りながら精力的に活動しています。

「作ることは楽しいので、好きなので、大変だって思ったことはないですね」と笑顔で語る平尾さん。

会社員としての仕事と両立しながらも、その活動は彼女自身の大きなエネルギー源となっているようです。

次回予告

偶然の出会いから糸掛け曼荼羅に魅了され、講師としてその楽しさを伝える活動をスタートさせた平尾さん。中編では、糸掛け曼荼羅が持つ「マインドフルネス」や「セラピー」としての側面について深く掘り下げていきます。黙々と糸を掛ける時間がもたらす心の浄化作用や、ワークショップで生まれる温かいコミュニケーション、そして参加者から寄せられる喜びの声など、単なるアートにとどまらない糸掛け曼荼羅の奥深い魅力に迫ります。どうぞお楽しみに!

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