2026.05.10

AI時代に生き残る音楽家の条件とは?「風の時代」の波に乗る

前回の記事では、作曲家・田村信二さんが幼少期のクラシックギターの挫折から、バンドでのメジャーデビューを経て、ゲーム音楽の制作現場で「職業作家」としての基礎を築き上げるまでの軌跡を追いました。

第2回となる今回は、AI技術の台頭やサブスクリプションの普及など、激変する音楽業界の現状に焦点を当てます。

これまで「営業しなくても指名される」働き方をしてきた田村さんが、なぜ今、新たなプロジェクトを仕掛けるのか?

本記事では、これからの時代に音楽家として生き残るための「生存戦略」と、誰もが主人公になれるという新プロジェクトの全貌、そして最新技術との付き合い方について深く掘り下げていきます。

第1回:「メロディを作るのが好き」ギター少年から職業作家への道のり

目次

営業しなくても指名され続けるプロの流儀

田村さんはこれまで、自ら積極的に営業をかけるのではなく、人との繋がりやご縁、そして「ご指名」で仕事を受けることが多かったと言います。

フリーランスや個人で仕事をする上で、なぜ彼のもとには絶えず仕事が舞い込むのでしょうか?その理由は、クライアントの期待を超える仕事ぶりにあります。

「最初はやっぱり、人との繋がりが入り口になることが多いです。でも、一番大事なのは『相手が求めているところに、しっかりとした音楽を作る』ことだと思います。それができれば、『次もお願いしよう』と思ってもらえますよね」

クライアントの要望を的確に汲み取り、期待以上のクオリティで応える。

この「職業作家」としての基本を徹底することが、次の仕事へと繋がる最大の秘訣です。

音楽に限らず、どんな仕事でも結局は「対 人間」。基本的な信頼関係を築くことこそが、最も重要だと田村さんは語ります。

相手の意図を汲み取り、それを形にする能力が、彼の長年のキャリアを支えているのです。

時代の変化に対応する「指名のうた(仮)」プロジェクト

これまでは指名されるスタイルで順調だった田村さんですが、近年は音楽業界全体に大きな変化の波が押し寄せています。

サブスクリプションの普及によるCDの売上減少や、AI技術の台頭による制作環境の変化など、これまでの常識が通用しなくなりつつあるのです。

そんな時代の変化を肌で感じた田村さんが、今年新たに立ち上げたのが「使命のうた(仮)」プロジェクトです。

これは、田村さんが過去出会ってきた経営者が、ビジネスは軌道に乗ったけれど、自分自身の使命がわからなくなってしまった、もう一度自身の過去を見つめる機会がほしいという声に答えて生まれたプロジェクトです。

一心不乱に努力し走り続けた結果、自分の使命がわからなくなった経営者に向けて、単なる楽曲制作ではなく、「使命の言語化」から「ブランド資産化」、そして「人生や経営の節目を象徴する一曲」までを一貫して設計する、完全オーダーメイドの楽曲制作サービス。

「ただ歌を作るのではなく、その人の生き方や想いそのものを、一曲に残したい。」

そんな想いから生まれたプロジェクトです。

AIは脅威か?最新技術とのポジティブな付き合い方

音楽業界において、AIの進化は目覚ましいものがあります。

プロンプト(指示文)を入力するだけで、わずか10秒ほどで完璧なミックスと歌声の楽曲が生成される時代。

この技術革新に対し、「仕事が奪われるのではないか」と不安を抱くクリエイターも少なくありません。

しかし、田村さんのAIに対するスタンスは非常に柔軟でポジティブです。

「それが良いか悪いか、賛否両論あるとは思います。でも、僕は『いいとこ取り』で利用すればいいと思っています。ChatGPTもよく使って歌詞を書いたりしていますし、AIと戦っても仕方ないですからね」

田村さんは、AIの進化を「自動運転の車」に例えます。

年齢を重ねるにつれて自動運転の便利さを享受するように、新しい技術の波には乗っていくべきだという考えです。

実際に、ChatGPTに「メロディ」という名前をつけ、自身を「しんちゃん」と呼ばせて個人的な悩みまで相談しているというエピソードからは、彼がいかに楽しみながら最新技術を取り入れているかが伝わってきます。

「プロデュース力」が求められるこれからの作曲家像

譜面からパソコンでの打ち込み、そしてAIを活用したミックスへと、作曲のプロセスは時代とともに大きく変化してきました。

しかし、田村さんは「最終的に良い音楽で心に響くかどうかが重要であり、プロセスはどうでもいい」と言い切ります。

だからこそ、時代の波にうまく乗れる柔軟性を持つ人が強いのです。

「これからの時代、『いわゆる音楽だけが好きな作曲家』はどんどん難しくなってくるかもしれません。自分を発信できたり、繋がりを持ったり、自分を出しながら自分の音楽を売っていく。そういう『プロデュース力』がある人が伸びると思います」

ただメロディを書くだけではなく、自分自身や音楽全体をプロデュースし、演出できる力。

それが、これからの時代を生き抜く「作曲家」の新たな形です。

もちろん、その根底には「音楽が好き」という揺るぎない思いが必要不可欠です。その太い軸を持ちながら、いかにして自分を認知させ、価値を届けていくか。

田村さんの挑戦は、これからのクリエイターにとっての大きな道標となるでしょう。

次回予告

第2回では、AIやサブスクといった時代の波を柔軟に乗りこなし、新たなプロジェクトへと挑戦し続ける田村さんの姿勢をお届けしました。

変化を恐れず「いいとこ取り」で楽しむマインドは、音楽業界に限らず多くの人にとってヒントになるはずです。

最終回となる第3回では、田村さんが経験した「どん底の時期」と、それを救ってくれた音楽の力について伺います。

さらに、年齢の壁を越えて世界を目指す新ユニットの活動や、これから音楽業界を目指す若者たちへの熱いメッセージをお届けします。最後までお見逃しなく!

この記事を書いた人

岡﨑渉のアバター
フリーライター
これまでBtoCの営業やWebマーケティング、キャリアコンサルタントなど幅広い仕事を経験。700人以上のキャリア・人生の転機に携わってきた経験から、お仕事図鑑では、働く人のリアルを丁寧に届け、次の一歩のヒントになる編集を心がけています。
【資格】キャリアコンサルタント・宅地建物取引士・FP2級

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