筒描き職人とは?300年の伝統を繋ぐ、鳥取県の伝統工芸

伝統工芸の世界には、100年以上、時には300年以上続くものも珍しくありません。その中でも「筒描き染め」は、江戸時代中期に木綿と藍が出会い発展した、染色技法の一つです。そんな筒描き職人の仕事は、単なるものづくりにとどまらず、長い歴史の中で培われた“人と仕事のリアル”を映し出す鏡のような存在です。

この記事では、そんな筒描き職人の世界を、300年以上続く伝統の背景から、職人たちの修業のリアル、経済的な側面、そして現代における新しい挑戦までを丁寧に紐解いていきます。あなたがもし、現状の働き方に疲れ、未来に不安を覚えているのなら、新たな可能性を模索するためのヒントや希望がきっと見つかるでしょう。

目次

筒描き職人とは?300年以上の歴史を持つ「染め」の伝統技法

筒描き染めは、その名の通り、紙を重ね渋で固めた筒状の道具を使って布に防染の糊を描き、その上から色を染める日本の伝統技法です。江戸時代中期、染物の技術が多様化していく中で誕生しました。特に、模様の繊細さを表現できるこの技法は、長い歴史の中で地域ごとに特徴を持つ染物として発展してきました。

この染め物は、単なる布地の装飾ではありません。一つひとつの手仕事による防染の技法が融合し、一枚一枚が「生きた作品」として生まれるのです。300年以上も続く伝統は、まさに職人の手と心が何世代にも渡って繋がってきた証。職人は、技術だけではなく、その歴史と文化を背負いながら仕事をしています。

下書きから納品まで!筒描き染めの10の工程

筒描き染めの工程は大きく分けて10段階。どれも職人の経験と感覚が不可欠です。

  • 下書き
    水で消える特殊な「下書き墨」で、のりを付ける部分に下書きをします。
  • のり置き
    のりは固さにより文様の描き具合が変わるため、気温や湿度に合わせて固さを調整します。和紙を重ね渋で固めた筒にのりを入れ、口金(くちがね)の先から絞り出しながら、下書きの上に沿ってのりをおきます。線の太さなどにより大小の口金を入れ替え、多彩な線をフリーハンドで描きます。
  • 水引き
    のりを置いたら生地をひっくり返して、裏から刷毛(はけ)で水を塗って湿らせます。のりと生地を密着させ、染料が入りやすくするための作業です。
  • 乾燥
    防染の役目を果たすよう、のりをしっかり乾かします。
  • 色引き
    指定された色を配合します。同じ配合でも天候などで色調が変わり、この作業も経験と熟練の技を必要とします。生地をキンバリ、伸子(しんし)という専用道具でしっかりと張り、色ムラができないよう正確に素早く、均一に刷毛で色を塗っていきます。
  • 乾燥
    色引きがムラにならないよう細心の注意を払い、天日干しで染料が乾くのを待ちます。
    影になる部分ができないよう、天気予報を見ながら日程を組みます。
  • 色止め
    染料が乾いたら色止め液を刷毛で綿密に塗り、のりを落とす際に色落ちがないようにします。
  • 水洗い
    色止めが終わったら水槽に2時間ほどつけ、のりをふやかします。のりが残らないよう荒目の刷毛を使って、念入りに水で落とします。のりが置いてあった箇所が白く浮かび上がります。
  • 乾燥
    再び天日干しにします。
  • 仕立て・納品
    縫製して完成、納品です。

この一連の流れは、機械ではなく全て手作業。特に「のり置き」と「色引き」には、見て覚え、繰り返し体で覚える熟練の技が求められます。気候や季節、布の状態に合わせて調整する繊細さは、まさに職人の「勘」の賜物です。

「見て覚える」の10年!伝統を継ぐ職人が語る修業のリアル

筒描き職人になるには、長い修業期間が必要です。多くの場合、10年、あるいは20年もの年月をかけて技を身につけていくのです。特に最初の数年は、上司や先輩職人のそばで、見て覚えながら、ひたすら手を動かし続けます。

この「見て覚える」という指導は、一見厳しく感じるかもしれません。でも、そこには言葉にならない技術や感覚を伝えようとする先人たちの思いが込められています。教科書や動画では決して伝わらない、微妙な筆の角度や糊の固さ、染料の染み込み方など、職人ならではの匠の技は、実際に身体で覚えるしかないのです。

また、修業中の収入は決して高くありません。伝統工芸士として独り立ちするまでは、生活を支えるために家族や工房の仲間の支えが欠かせないケースも多いんですよね。だからこそ、家族ぐるみで支え合いながら伝統を守る一族も少なくありません。縫製や商品開発、販売といった周辺の仕事を担いながら、若手を育てるという役割分担もあります。

このように、修業は決して楽ではありませんが、長い時間をかけて得た技術は一生の財産になりますし、その過程で培われる人間関係や忍耐力も、他の仕事ではなかなか得られない貴重な経験になるでしょう。

伝統工芸士の年収は?筒描き職人の「経済的なリアル」とやりがい

伝統工芸士の収入は、分野や地域によって差がありますが、一般的には年収490万円から700万円程度とされています。しかし、修業期間中は収入が低く、独り立ちしてからやっと、というケースが多いのが現実です。

筒描き職人も例外ではなく、修業時代の収入は決して高くはないでしょう。ですが、熟練の職人になると、注文や受注する製品の質や量に応じて収入は増えます。また、自分の名前や工房の名前で商品を販売できるようになれば、さらに収益の幅も広がっていくと言えます。

伝統工芸を継ぐ者のやりがいとしては、何と言っても「自分の手で300年以上続く伝統を守り、次世代に繋げていく」という誇りでしょう。先人たちの知識や技法を受け継ぎ、現代に生み出し続けていく。技術だけでなく伝統文化を守るという使命感も、職人としての生きがいにつながっています。経済的な側面だけでなく、心の豊かさも大切にできる仕事だと言えます。

伝統を守り、新しい魅力を発信!現代の筒描き職人の働き方

時代が変わっても、筒描き職人は伝統を守りつつ、新しい挑戦も続けています。例えば、アパレルやデザインの知識を活かして、現代のライフスタイルに合った商品開発やショップ運営に取り組む例も増えています。

家族や工房の仲間で協力しながら、糊置きや色引き、縫製だけでなく、ウェブマーケティングやイベント企画など多様な役割を担うこともあります。伝統工芸を単なる“過去のもの”にせず、「今の時代に伝え、楽しんでもらう」ための柔軟な発想が求められているんですね。

また、海外からの注目も高まっており、和の美しさを世界に発信するための取り組みも進んでいます。こうした動きは、若手職人にとっても新たなモチベーションとなり、伝統と革新が共存する働き方を可能にしています。

あなたの仕事にも通じる!「伝統」と「革新」を両立させる生き方

筒描き職人の人生を通して見えてくるのは、「伝統を大切に守りながらも、時代に合わせて革新を取り入れていく」生き方のヒントです。どんな仕事でも、長く続けていくには「守るべきもの」と「変えていくべきもの」のバランスが大切ですよね。

もし今の働き方に疑問を感じているなら、筒描き職人たちのように、じっくり時間をかけて技を磨きながらも、新しいアイデアや方法を取り入れてみるのも一つの道かもしれません。

あなたの人生の中で、あなただけが持つ「何か」があるはずです。今の仕事や人生にも、きっと「守り続けるもの」と「変えていく勇気」を判別することができれば、きっと未来への希望となるはず。筒描き職人のリアルな人生から、そんなヒントを受け取ってもらえたら嬉しいです。

「筒描き職人」とは?

筒描き職人は、江戸時代中から約300年続く伝統的な染色技術の担い手です。糊置きや色引きといった繊細な技術は、一朝一夕には身につかず、10年以上の長い修業期間が必要とされます。収入面では決して恵まれているとは言えませんが、伝統を守りながらも現代のニーズに合わせて革新を取り入れることで、新しい働き方を模索しています。

この、「守り」と「攻め」を両立させる職人という生き方は、仕事に悩みを抱える現代の私たちにも、多くの示唆を与えてくれます。守るべき伝統と変えていく革新、その両方を大切にしながら、自分らしいキャリアを築いていく勇気がきっと生まれるはずです。

お仕事図鑑編集部
お仕事図鑑は、働く人の“リアルな経験とストーリー”を通して、未来のキャリアに役立つ視点を届ける「働くストーリーメディア」です。体験談・取材・インタビューなど複数の形で、1万5,000人以上の働く人の声を蓄積してきました。肩書きや仕事内容の説明だけでは見えにくい、仕事を選んだ理由、続ける中での葛藤、転機での判断、価値観の変化。そうした“プロセスのリアル”を丁寧に編集し、読者の気づきを次の一歩につなげるヒントとして届けます。
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