独立から28年、一度も仕事が絶えない大工の「プロの発想力」 

仕事で壁にぶつかった時、あなたはどうしますか?

「無理だ」と諦めてしまうのか、それとも「どうすればできるのか?」を考え抜くのか。

今回お話を伺ったのは、リフォームのプロフェッショナルである「大工」の今井辰也さん。建築業界で「断った案件ゼロ」、「営業ゼロ」という驚異的な実績を持つ今井さんは、他社が匙を投げた難題を次々と解決する「最後の砦」として知られています。その背景にあるのは、単なる技術力ではありません!職種を問わず、スキルアップを目指す全ての人に応用できる、「知識×技術×経験=発想力」という独自の考え方と仕事への真摯な向き合い方なんです。

本記事では、今井さんの仕事観や人生を通して、困難な状況を打破して、以来の絶えないプロフェッショナルになるためのヒントを探っていきましょう。

目次

リフォームのプロが語る「日本の家」の真価

今井さんの大工歴は40年近く、自身で独立してからは28年にも及びます。その経験から、今井さんは「建て替え」よりも「リフォーム」を推奨する理由を明確に語ります。それは、戦後の高度成長期に建てられた日本の建物が持つ、「ビクともしない、立派な作り」への確信があるからです。

「昔の建物は築50年でもビクともしないくらい立派。大手さんがいなかったんで、その時はみんな工務店さんがやってたんで、その時の建てた建物を今でもリフォームとかで、いろんなお客様のお宅にお邪魔させていただいても、もう全然びくともしないぐらい、やっぱりしっかりと作られている建物が本当に多いと感じますね」

当時の大工や工務店は、お客様から直接依頼を受け、一生に一度の家づくりに真摯に向き合っていました。その結果、築50年を経てもなお、その構造は現代の基準から見ても圧倒的に優れていると今井さんは断言します。

これは、仕事における「本質」を追求する姿勢に通じると感じました。目先の利益や効率ではなく、「長く価値を提供し続けること」を追求した結果が、今もなお残る「日本の家」の真価なのです。

「何がちがう?」一カ月で建つ家、一年で建つ家

現代の家づくりは、経済効率を重視し、短期間で完成することが一般的です。既に用意されているパーツを選び、さながらプラモデルを組み上げるかのようです。しかし、今井さんは、昔の家づくりが半年から一年かかっていたことには、理にかなった理由があると指摘します。

「基礎ができたら、きちんと基礎のコンクリートの芯まで乾かすために、一ヶ月とか二ヶ月そのまま放置して重みをかけることによって、乾燥もするし、沈んでいく。木が落ち着くって言うんですけど、落ち着いた時に屋根をのせて乾かして窓の下地を入れて乾かせて、時間をかけて家を土地に馴染ませていく、要はそれで歪んでこない家が出来上がる」

基礎をしっかりと乾かし、屋根の重みで木材を落ち着かせてから次の工程に進む。この「時間をかける」工程こそが、家を歪ませず、長く持たせる秘訣との事でした。

これは、私たちの仕事にも通じる教訓ではないでしょうか?短期的な成果を急ぐあまり、基礎となる準備や検証を疎かにしていないでしょうか。「急ぐこと」よりも「質を追求すること」。時間をかけて土台や基礎基本を固めることが、後々の大きな歪みや手戻りを防ぎ、結果として長期的な成功に繋がるでしょう。

建築業界の常識を打ち破る、断った案件ゼロの「最後の砦」

今井さんの最も素晴らしい実績は、「断った案件がゼロ」という点です。三社、四社と断られた難題でも、今井さんは必ず引き受け、解決に導いてきました。

「基本的に今まで本当にね、もう40年弱ぐらいやってますけど。いやーちょっとごめんなさい、これ無理なんでよそにお願いしてください。とかそういうことは今まで自分の中では一回もないです」

他社が断る理由は、業界の常識や慣習に縛られているからだそうです。しかし、今井さんは「やれる範囲って一個でもないし、二個でもない」と考えます!不可能を可能にする背景には、「どうすればできるか」をまず考えるという強い信念と行動力があります。

独立直後、仕事がなく苦しい時期を経験した今井氏は、「とにかく行動!」と、リフォーム会社や不動産屋に飛び込みで営業をかけました。この困難な状況での行動力が、今の「最後の砦」としての信頼を築く原点となっています。キャリアの壁に直面したとき、「やらない理由」を探すのではなく、「どうやるか」に焦点を当てるマインドこそが、今井さんをプロフェッショナルへと導いてきたのです。

「知識×技術×経験=発想力」難題を請け負う今井さんの流儀

今井さんが難題を解決できる秘密は、その独自の「発想力」にあります。そして、その発想力は、以下の3つの要素の「掛け算」によって生まれると言います。

「知識×技術×経験かな?それが発想力」

1.知識: 建築業界の常識を打ち破る幅広い知識。

2.技術: 16歳から大工として培ってきた、確かな職人技。

3.経験: 40年近くにわたる、様々な現場での問題解決の積み重ね。

今井さんは、長い経験と豊富な知識の中から、目の前の作業に最も適した選択肢を選び出します。一つの方法が使えなくても、「じゃあこっちかな」と、別の方法を試行錯誤する。この柔軟な思考こそが、難題を解決する鍵ですね!

キャリアアップを目指す私たちも、専門知識や技術を磨くだけでなく、それらを組み合わせて新しい解決策を生み出す「発想力」を意識的に鍛える必要があると感じました。今井さんの言葉は、インプットとアウトプットを繰り返すことこそが、真の「経験値」となることを教えてくれます。

受け取っているのは「お金」じゃなくて「思い」

今井さんとの取材を進めていくと、そのプロ意識の根幹にあるのは、仕事に対する真摯な人間性を伺うことができました。職人になってから、今井さんは自分の仕事の価値を再認識しました。

「自分の仕事は数百円じゃない、自分の技術は数百万の技術。その数百万を貯めた人の過去や思いを受け取っている。その思い(お金)を受け取っていることを感じながら作業していく」

お客様が家のために費やした時間、労力、そして「思い」の重さを理解し、その「思い」に応えるために最高の技術を提供する。今井さんにとって、報酬は単なる「お金」ではなく、お客様の「思い」の塊なんです。

この意識は、職種を問わず、すべてのプロフェッショナルに求められます。自分の仕事が、誰かの人生や事業にどれほどの価値を与えているのか。その「思い」の重さを感じながら仕事と向き合っているでしょうか?その意識を持ち、お客様の思いを想像することで、私たちはより高いモチベーションと責任感を持って、質の高い仕事を提供できるようになるでしょう。

【次回予告】

今井辰也さんの人生は、挫折から始まり、困難を乗り越え、独自のプロ意識を確立した「叩き上げの物語」です。

「不可能はない」「どうすればできるか」という今井さんの思考法は、私たちビジネスパーソンがキャリアの壁を乗り越えるための羅針盤となります。

・知識・技術・経験を掛け合わせ、発想力という武器を磨く。

・短期的な技を探すのではなく、時間をかけて今あるスキルの土台を固める。

・報酬を「お金」ではなく「思い」として受け止め、真摯に向き合う。

今井さんの言葉は、学歴や経験に関係なく、「誰にも何にでもなれる」という確信を与えてくれます。今日から、あなたの仕事に今井さんのプロ意識を取り入れてみませんか?

次回は、そんな今井さんの幼少期からの独立直後の苦難の歴史、そしてTVチャンピオンでの優勝、テレビ番組「職人ワゴン」出演から、日本の技術力を改めて実感したエピソードなどを交え、より深掘りしていきましょう!

この記事を書いた人

お仕事図鑑は、働く人の“リアルな経験とストーリー”を通して、未来のキャリアに役立つ視点を届ける「働くストーリーメディア」です。体験談・取材・インタビューなど複数の形で、1万5,000人以上の働く人の声を蓄積してきました。肩書きや仕事内容の説明だけでは見えにくい、仕事を選んだ理由、続ける中での葛藤、転機での判断、価値観の変化。そうした“プロセスのリアル”を丁寧に編集し、読者の気づきを次の一歩につなげるヒントとして届けます。

目次