挫折と苦難を乗り越えて、圧倒的な職人の道へ

キャリアの壁にぶつかり、未来が見えなくなったとき、あなたならどうしますか?

前回の記事では、リフォームのプロフェッショナル・今井辰也さんの「断らない仕事術」と、その根底にある思考法に迫りました。しかし、その圧倒的なプロ意識は、決して平坦な道で培われたものではありませんでした。今回は、今井さんのキャリアの原点を遡ります。野球少年だった彼が経験した突然の挫折、極貧生活、そして独立直後の苦難。そのすべてを乗り越え、唯一無二の職人へと至る「再起の物語」から、私たちが明日へ踏み出すためのヒントを見つける旅に出ましょう!

目次

純朴な野球少年から一点、不登校の中学時代

今井さんの少年時代は、野球一筋でした。小学生の頃からその才能は際立ち、地域の選抜チームに選ばれるほどの実力。しかし、中学に入学すると、その輝かしいキャリアは思わぬ形で壁にぶつかります。

中学で出会った顧問は、まさに理不尽の塊。純朴な少年の心を折ってしまうには十分なものでした。信頼できる指導者の不在と、理不尽な環境。それは、誰にでも起こりうるキャリアの「壁」でした。目標を見失った今井さんの足は、学校から遠のき、卒業式も校長室で一人迎えることになります。順風満帆だった野球少年は、人生ではじめて大きな挫折を味わったのです。

「大工との出会い」彼女の父に4度頼み込み弟子入り

中学卒業後、アルバイトを転々とする日々。そんな中、今井さんの人生を大きく変える出会いが訪れます。当時付き合っていた彼女の父親が、工務店を経営する大工だったのです。

「彼女と一緒にいたいから、もうここで働くしかないなと思って。で、お父さんに「働かせてください」って言ったんですけど、3回断られて。で、4回目にお願いしに行って、やっと「じゃあ明日から来い」って」

「彼女と一緒にいたい」という、なんとも少年らしい純粋な動機。しかし、その思いは、今井さんに驚異的な行動力を与えました。3度断られても諦めず、4度目の直談判で、ついに大工見習いとしてのキャリアをスタートさせます。この「絶対に諦めない」姿勢こそが、後の人生を切り拓く原動力となっていくのです。

ある日妻から言われた「100円のジュースが買えない」

4度も直談判するほど大好きだった彼女と20代で結婚し、子供にも恵まれた今井さん。しかし、時代はバブル崩壊の真っ只中。工務店の仕事は激減し、生活は困窮を極めました。そしてある日、妻から告げられた一言が、今井さんの心を強く揺さぶったのです。

「たしか夜だったかな、話してたら「100円のジュースも買えない」って言われたときに、もうね、すごいショックで。俺、何やってんだろうなと思って。このままじゃ、この子たちを育てていけないなと思って」

愛する子どもに、100円のジュースすら買ってあげられない。そう妻から言われた今井さんは、その悔しさと無力感から「独立」という大きな決断をしました。この「100円のジュース」のエピソードは、まさに彼のキャリアの分岐点となり、最大の原動力となりました。誰かのために、お客様のために、を大切にする現在の仕事観にも繋がっているのです。

「独立直後、仕事ゼロ」活路を見出したとある行動

25歳で独立。しかし、現実は甘くありません。親方の顧客を引き抜くことは、不義理にあたる!と決して行わなかったため、仕事はゼロ。貯金も底をつき、まさに崖っぷちの状態でした。

退路を断たれた今井さんが取った行動は、実にシンプルでした。それは、「とにかくなんでも行動する」こと。リフォーム会社や不動産屋に片っ端から飛び込み営業をかけ、「仕事が欲しい」と頭を下げて回ったのです。しかし、当時は「大工の棟梁」というには、あまりにも若い今井さん。「お前に何ができるんだ!」と追い返される日々です。しかし、この愚直なまでの行動力が、やがて大きなチャンスを引き寄せることになります。

TVチャンピオンで人生激変!神奈川ナンバー1企業へ

とにかく飛び込んでいく中で出会ったとある不動産会社。案の定追い返されますが、その後今井さんの元に「急にやらなきゃいけない仕事ができた。お前できるか?」若い今井さんを試すような口調でした。「やります!」若いとはいえ、9年間培った技術を思う存分発揮し、「若いのにやるじゃないか」という言葉を引き出しました。そこから今井さんのもとには、依頼が絶えず入るようになりました。

そんな中出会った一社のリフォーム会社。その会社との出会いが、今井氏の人生を劇的に変えました。ある日、その会社の社長から「今お願いしてる仕事は全部止めるから。TVチャンピオンに出てみないか」と誘われたのです。

最初はためらい断ったものの、「いや、今井君なら絶対優勝できるから」と語る社長の熱意に押されて出場を決意。そして、なんとリフォーム職人選手権で優勝!この快挙をきっかけに、そのリフォーム会社は「神奈川ナンバー1」の称号を手にし、仕事の依頼が殺到するようになったのです。

下請けから脱却!自らの技術で勝負した結果

TVチャンピオン優勝後も、しばらくはリフォーム会社の下請けとして仕事をしていました。その会社で今井さんは、「最後の砦」といった扱いを受けていました。

他の業者さんが行ったリフォームで、クレームが出た際は、本社の人と一緒に今井さんが出向きます。「TVチャンピオンで優勝した大工さんだから」そんな言葉とともに、リフォームのやり直しを今井さんが担当すれば、その後のクレームはゼロ!まさにそのリフォーム会社にとって、今井さんは救世主なのでした。

しかし、そんな彼に、ある不動産会社の社長の言葉が、再び転機をもたらします。

「「今井くん、腹いっぱい食べたくないか?」って言われて。仕事をもらう下請けの立場では、結局ある程度しかもらえないんですね。そっか、自分は腹いっぱいになったことがなかったんだ、って気付かされました」

この一言で、今井さんは下請けから脱却することを決意!リフォーム会社からの仕事は全て断り、自社の顧客だけで勝負する「退路を断つ」決断をします。不安はありましたが、結果は驚くべきものでした。これまで培ってきた技術と信頼が実を結び、紹介だけで仕事が途切れることがなくなったのです!

「職人ワゴン」に棟梁として出演!道具一つで世界を救う

TVチャンピオン優勝から10年後、今井さんに新たな挑戦の機会が訪れます。人気番組「職人ワゴン」への出演依頼でした。今度は、日本の優れた職人たちを率いる「棟梁」として、道具一つで世界の人々を助ける旅に出ます。

「日本の技術って、やっぱりすごいんだなっていうのを再確認しましたね。釘を使わなくても、木と木を組むだけで、すごい頑丈なものができる。それは、海外の人から見たら、もうマジックなんですよ。僕が仕事してるだけで色んな人が覗きにくる」

海外での活動を通して、今井さんは日本の伝統技術の素晴らしさと、自分の技術が世界で通用するという確固たる自信を得ました。それは、彼のキャリアが、日本という枠を超えて、世界へと広がった瞬間でした。

【次回予告】

今井さんの人生は、まさに波乱万丈!しかし、その一つ一つのかけがえのない経験は、彼を圧倒的な職人へと押し上げました。

今、キャリアに悩んでいるあなたも、今井さんの物語から人生を好転させるヒントを得たのではないでしょうか?どんな困難な状況でも、諦めずに行動し続ける限り、道は必ず開けます。

挫折と苦難を乗り越え、日本一、そして世界へと羽ばたいた今井さん。そんな彼が語る「夢」とは何なのでしょうか?

最終回となる第3回では、今井さんの仕事観の根幹に迫ります。心のどこかで「自分は報われない」と感じている人にこそ読んでほしい。お楽しみに!

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